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tortillaの日記

文章を書くのは日々のできごとの整理。

前に住んでいたところは美しい

今、台湾の家を出たくて仕方がない。何もかもが日本の家のほうがよく見える。仕事から帰るときは「こんな家出ていきたい、でも夫と子どもたちが恋しいから帰るしかないんだよなぁ」と泣きながら帰るし、何もしないでいると悪いことばかり頭に浮かんでまた泣きたくなる。それを見ている家族もいい気分になることはないだろうから、どうにか泣かないように何か気がまぎれそうなことを探したり、考えたりしている。

そんなとき、ふと思い出した言葉がある。「ブエルボアルスール」。小学校の国語の教科書に載っていた物語に出てくる言葉だ。題名は忘れてしまったけれど、主人公の友だちが故郷のブラジル(かどこか南米)を懐かしんで?あるいはそこに帰るときの別れの言葉として?その辺は忘れてしまったのだが、とにかく「ブエルボアルスール」と言う。それは「南に帰る」という意味で、当時の私はそれをずっと心の中で繰り返していたものだった。

私の実家は埼玉だが、小学1年生まで「湘南」に住んでいた。家から歩いて5分ほどで海岸、自転車を20分漕げば江ノ島に着く。そんな素晴らしい場所に住んでいた。その頃の私は男の子と走り回っていることが多く、女の子の友だちとはなかなかうまく遊べなかった。虫取りや戦いごっこ、鬼ごっこといった体を動かす遊びが大好きだった。小学校でも男の子の中でけり野球をしたり、放課後よく一緒に遊んだのも男の子だった。
そんなやんちゃな幼少時代を過ごして、埼玉に引っ越してみると、担任の先生は「男の子と女の子別れて遊びなさい。」とか「女の子の遊びと男の子の遊びは違うでしょ?」とか今まで聞いたこともない言葉を発して、驚いたのをよく覚えている。先生の話は絶対だと思っていた子どもだった私は違和感を感じながらも女の子と鉄棒や何かしらで遊んで、男の子からは遠ざかった。
このことが関係しているのかはよくわからないけれど、4年生くらいになって、とにかく「湘南」に帰りたくなった。親戚もいないし、帰れるわけもないのにどうしても帰りたかった。走り回った砂浜、家族で自転車で行った江ノ島、何でもかんでも恋しかった。友達に会いに遊びに行ったりもしたけれど、とにかくそこに住みたかった。そんな状態が2,3年続いてようやく埼玉になじんだものだった。
「ブエルボアルスール」。湘南がそれほど南でないことは当時もわかっていたけれど、私も「南へ帰りたい」。そう思って、この言葉をずっと繰り返していた。前回も書いたけれど、その時も変わらず、物語の登場人物に感情移入していたのだ。

というわけで、家族と引っ越してきた土地でも「前に住んでいたところに帰りたい」と思っていたんだなと思いだしたら、今の状況も納得できる気がしてきた。
台湾に来て3年半が過ぎた。目新しいこともなくなってきて、やっぱり前に住んでいたところが美しく見える時期なのかもしれない。(もちろん、それ以外に余計なストレスがあるってのも忘れてないけれど)しばらくは埼玉を恋しがりながら、生活していくんだろうな。家族関係とはまた、違った面でホームシックにかかっているのかな。という気付きがあった。